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— Prologue

Dojoの朝、プール脇で
100人が働く島

朝7時、チャングーのDojo Baliに入ると、プールを囲むデッキにはもう30〜40台のMacBookが並んでいる。椰子の葉の間から落ちる斜光、湿った空気、バリ独特の線香の匂い。カプチーノはIDR 45,000(約430円)、注文するとバリスタが「Good morning」と笑う。9時を過ぎる頃には席は100人分ほぼ埋まり、英語・ドイツ語・韓国語・日本語のSlack通知音が、同じ時刻に鳴っている。

チェンマイが「静寂の古都」で、ホーチミンが「熱量のクラクション」なら、バリは「開放」そのものだ。仕事に集中するために来る街ではない。仕事も、サーフも、ヨガも、ヒンドゥーの祭りも、全部同じ空気のなかで隣に並んでいる。ZoomのミュートをオフにしてMTGを始めたときに、窓の外でガムランの音が鳴っていても、もう誰も気にしない。

満員電車のドアが閉まり、窓に映る自分の疲れた顔を見て月曜の朝を始めている——日本の読者の今の現在地は、おそらくそこにある。この記事が描くバリは、そこから飛行機で8時間離れた場所にある。遠くはあるが、資格も、英語力も、年収$60,000も、入場券としては必要ない。B211Aというビザと往復航空券さえあれば、誰でも180日まで試せる島だ。

以下、Dojoのあるチャングー/ジャングルのウブド/崖と海のウルワツ——3エリアの住み分けから、Nomad Listが示す月30万円の「表面の数字」を長期契約で月15〜20万円に落とす内訳、B211AとKITAS E33Gの現実的な使い分け、そしてスクーター事故・Bali Belly・過密という避けて通れない影まで、一次データで整理する。

I
— Chapter One

チャングー/ウブド/ウルワツ——
どこに住むかで別の島になる

バリを「バリ」と一括りで語ると、ほぼ必ず選択を誤る。島の南海岸と内陸では、気温も音も働き方もまったく違う。ノマドが実際に拠点にする3エリア——チャングー、ウブド、ウルワツ——はそれぞれ独立した別都市だと思ったほうがいい。

チャングー(Canggu)——社交と密度のノマド首都

バリ島南西の海岸沿い、Echo Beachと Batu Boloオnの周辺に広がるエリア。ライスフィールドを切り拓いた小径にヴィラ、コリビング、カフェ、ナイトクラブが濃密に並ぶ。Nomad ListのバリCangguページ(2026年4月参照)では、シングルノマドの月額コストが$1,911(約29.6万円)、街の総合スコアは3.3/5(世界329位)。スコアが伸び悩んでいるのは、2024〜25年の急拡大による渋滞・家賃高騰の副作用で、現地在住の日本人ノマドのnote記事でも「3年前のチャングーじゃない」という声が増えている。

それでもチャングーを選ぶ理由は明確で、世界でこれほどノマド密度が高い場所はほかにない。Dojo Baliに毎日100人が集まり、仕事後にYoga Barrelでヨガ、Single Finで夕日を見てOld Man’sに流れる——この1日の型がエリア徒歩圏で完結する。家賃は1BRのヴィラで月$600〜$1,500(約9.3〜23万円)。ソロノマドの初回滞在として一番失敗しにくい場所だ。

ウブド(Ubud)——集中とジャングルの内陸

バリ島中央、標高200m前後の内陸の町。ライスフィールドと熱帯の森、ヒンドゥー寺院、アート系ギャラリー、ローフード・ヴィーガンレストランが織り重なる。Nomad Listのウブドページ(2026年4月参照)では総合スコア3.67/5、世界40位——チャングーを大きく上回り、2026年現在のバリでは実はウブドのほうが高評価だ。シングルノマド月額は$2,091(約32.4万円)とチャングーよりやや高いが、家賃が同額なら一段広いヴィラに住める。

ウブドはライター、小説家、SaaS開発者、ヨガ講師、ヒーラー——「一人で何かを創る仕事」の人たちのコロニーになっている。朝はジャングルの霧、日中は寺院の鐘、夜は虫の声。チャングーの社交の消耗に疲れて移ってくるノマドも多い。家賃は1BRで月$400〜$900(約6.2〜14万円)、ヴィラごと借りても$800〜$1,500で見つかる。

ウルワツ(Uluwatu)——崖と海のサーフ拠点

バリ島最南端、石灰岩の崖が落ちる先にインド洋のレギュラーブレイクが並ぶエリア。2020年代後半、サーフ特化でチャングーの混雑から離脱したノマドの移住先として急成長した。Single FinのサンセットとUlu Cliffhouseは、いまバリで最も写真に撮られるノマドスポットだ。

家賃は1BRで月$500〜$1,200(約7.7〜18.6万円)。カフェの質もここ2〜3年で一気に上がり、Drifter、Cashew Tree、Suka Espressoは作業環境としても合格点。ただしエリアが縦に広く移動はスクーター前提、ノマド密度はチャングーの3分の1程度、アフターファイブの選択肢は限定的。「サーフが生活のコアにあるかどうか」で向き不向きが完全に分かれる

目的別の結論

  • 社交・密度・初回トライ→ チャングー
  • 集中・創作・静けさ→ ウブド
  • サーフ・崖と海・落ち着き→ ウルワツ

どれが自分に合うか事前には分からない、というのが本音のところだ。現地の日本人ノマドからも「迷うならチャングー1ヶ月→ウブド1ヶ月」の2拠点型を勧められることが多い。B211Aの180日があれば、この移動は余裕で収まる。チェンマイやホーチミンとの対比で「東南アジアのなかで自分はどのモードが合うか」を詰めたいなら、チェンマイ・ノマド完全ガイドホーチミン・ノマド完全ガイドも並行で読んでほしい。

II
— Chapter Two

生活費——表面の月30万と、
長期契約で月15〜20万円に落ちる内訳

Nomad ListがバリCanggu月$1,911(約29.6万円)、ウブド月$2,091(約32.4万円)と示す数字(2026年4月参照)は、海外ノマドが「とりあえずAirbnbで1週間予約して普通に暮らしたら」の水準だ。日系読者がチェンマイやホーチミンと並べて読むと「バリは高い」と結論を急ぎそうになるが、それは表面の数字だけを見た判断になる。

実際に長期契約で住むと、生活費は月15〜20万円に落ちる。これが現地の日本人ノマドが共通して口にする数字で、筆者の周辺もこのレンジに収まっている人が多い。短期Airbnbと長期契約の家賃差が最も大きく、ここだけで月$500〜$800の差が出る。

月額の目安(長期契約・快適ライン)

項目月額目安備考
家賃(ローカル1BR〜ヴィラ)6.2〜12.5万円長期契約で$400〜$800。コリビング$500〜$800
食費3〜5万円Warung中心なら$200〜$300、ノマドカフェ込みで$400
コワーキング0〜3.6万円Dojo月額約$230。カフェ主体なら不要
スクーター0.9〜1.2万円月レンタル$60〜$80+ガソリン
通信(SIM)0.2〜0.3万円Telkomsel/Indosat 無制限IDR 150,000前後
ヨガ・サーフ・マッサージ1〜2.5万円ヨガ月額$70〜、サーフレンタル1日$5〜
その他(雑費・遊び)1.5〜3万円ビーチクラブ、週末トリップ等

合計で月12.8〜27.1万円、快適ラインで月15〜20万円。東南アジアで見ればチェンマイ(月12〜18万円)より1.3〜1.5倍高く、ホーチミン(月15〜20万円)とほぼ同水準。「東南アジア最安」ではないが「ライフスタイル投資効果」が抜きん出ている——ここがバリの生活費を読むときの正しい軸だ。

月15万円でプール付きヴィラに住み、毎朝サーフィンに行き、週2でヨガをして、仕事のあとにビーチのサンセットを見る生活。東京でこの生活を再現しようとすれば、家賃だけで30万円では足りない。金額の比較ではなく、同じ金額で何時間「自分の時間」が取れるかの比較をすると、バリの数字はまったく違って見える。

この水準を稼ぐ手段は会社員リモート転職・フリーランス・ストック型ソロ事業まで6タイプに分かれる。「自分のキャリアの延長でどれが一番届きそうか」は海外で働ける仕事ランキングで3軸比較している。生活費のイメージができたら、次は収入源の当たりをつけてほしい。

※ 生活費データはNomad List(2026年4月参照、Canggu/Ubudページ)および現地在住ノマドの報告をもとに構成。為替レートは1USD≒155円、1IDR≒0.0095円で計算。

サイゴンが熱帯の熱量、
チェンマイが静寂の古都なら、
バリは「開放」そのものだ。

— Key Insight
III
— Chapter Three

働く場所——Dojo中心の
コワーキング生態系

バリの通信環境は、過去に比べれば劇的に改善した。Biznet光が50〜150Mbps出るエリアが増え、5Gも主要エリアで繋がる。それでも停電は月に数回あり、家のWi-Fiが落ちる日はコワーキングとカフェに逃げるのが現実の運用だ。近年はStarlinkを自宅に引き、スマホテザリングで外に出るノマドも増えている。

コワーキング(チャングー中心)

Dojo Bali(チャングー・Echo Beach)

言わずもがな、世界最大級のノマドコワーキングのひとつ。Echo Beach徒歩2分、プールを囲むデッキ席、屋内ホットデスク、電話ブース、キッチン、24/7アクセス。Wi-Fiは実測200Mbps超、Zoomで落ちることはほぼない。週次のイベント・ピッチナイト・ヨガクラスがあり、コミュニティがそのまま仕事と遊びに溶け込む構造になっている。

  • 料金: 月無制限パス約$230(IDR 3,800,000前後)、デイパス$14
  • 雰囲気: 国際色が強い。英語で仕事が完結

Tropical Nomad(チャングー・Batu Bolong)

チャングーもう一つの主力。オープンエア×熱帯植物のインテリア、カフェ併設、プール付き。Dojoより席のゆとりがあり、集中したい日に合う。月額パス約$150〜$180、デイパス$9前後。

B Work Bali(チャングー)

大型屋内スペース型。エアコン完備のガラス張り区画が多く、スコールで気温が乱高下する雨季にもっとも快適に働ける。モニターレンタルあり、スタートアップ志向のイベントが強い。

Outpost Canggu(コリビング併設)

コワーキング+コリビングの複合型。住まいと仕事場が徒歩ゼロで繋がる運用ができ、初回1ヶ月のトライ滞在に向く。ウブドにもOutpost Ubud Penestanan店がある。

ウブドのコワーキング事情

かつてウブドの代名詞だったHubudは2020年代前半に閉店している——この情報が古いブログに残っていて誤解する人が多いので明示しておく。2026年現在のウブドの実質最有力はOutpost Ubud Penestanan。ジャングルに面したテラス席、月額パス約$180、コリビング併設。ほかにTitikTemu、Paradiso、Mudra Cafeなどカフェ兼作業場が機能している。

ウルワツのコワーキング事情

ウルワツは独立したコワーキング数は少なく、Single Fin、Drifter、Suka Espresso、Cashew Treeといったカフェを日替わりで回るのが定番運用。Single Finは午前中は静かで、夕方から社交空間に変わる二面性がある。ガッツリ集中型の人は、週に数回チャングー/ウブドに通う人もいる。

ノマド向きカフェ

チャングー: Crate Cafe(朝行列の定番、作業席は限定的)、Milu by Nook(ライスフィールドビュー)、Ruko Cafe(落ち着いた作業向け)、Matcha Cafe Bali(日系・作業しやすい)。ウブド: Alchemy(バリ最古のローフード、静か)、Watercress Cafe、Seniman Coffee Studio(コーヒーの質で島内最高峰)。

共通の注意点として、バリの停電は「想定内」にしておく。大型コワーキングは発電機バックアップがあるが、カフェや自宅は落ちる。Starlinkを住まいに引くノマドが増えているのは、この不安定さを静かに解決するからだ。ビデオ会議が命綱の仕事なら、最低限スマホのテザリング(Telkomsel無制限プラン、実測30〜80Mbps)をバックアップに据える設計にしておきたい。

IV
— Chapter Four

ビザ——B211Aで180日、
KITAS E33Gは年収$60K以上の世界

バリのビザはノマドにとって、2024年を境に選択肢が2層化した。B211Aという従来の実務ビザと、新しく登場したKITAS E33G(デジタルノマドビザ)。ただし両者は対象ペルソナが完全に違うので、名前だけ見て「ノマドビザができたならこっちだろう」と判断すると要件ではじかれる。

1. B211A(Visit Visa/実運用の主軸)

バリ長期滞在ノマドの実質的な主力ビザ。もともと出張・訪問向けだが、柔軟な延長制度により実質的な長期滞在に使われてきた。

  • 基本滞在: 60日
  • 延長: 現地で2回まで延長可、60日+60日+60日で最長180日
  • 申請費用: 代理店経由で$150〜$200が相場(自力申請も可能だが代理店利用が主流)
  • 申請サイト: molina.imigrasi.go.id(インドネシア移民局公式)
  • 申請方法: オンライン申請→スポンサー(代理店が提供するケース多数)→到着後60日ごとに延長手続き

180日滞在できて、代理店手数料込み$150〜$200。コアペルソナ(年収400〜800万円帯の会社員)にとっては、これが正解だ。DTV(タイ)の預金210万円要件もなく、KITAS E33Gの年収$60,000要件もなく、航空券と$200で入れる。初回の1ヶ月お試しから、合えば3ヶ月・6ヶ月の本格滞在まで、同じビザで繋げられる。

2. KITAS E33G(デジタルノマドビザ/2024年開始)

インドネシア政府が2024年1月に新設した、正式なリモートワーカー向け長期滞在ビザ。名前は魅力的だが、要件は正直に書く。

  • 年収要件: USD 60,000以上(日本円で月77万円相当の年収)
  • 預金要件: USD 2,000以上(約31万円)
  • 収入源: 100%インドネシア国外からの収入であること
  • 滞在期間: 最長1年、更新可
  • 税制: 国外収入への非課税

年収$60,000という要件は、日本の普通の会社員の年収レンジ(400〜800万円)に照らすと上位層でないと届かない。「普通の会社員の一歩目」としては現実的ではなく、これはあくまでハイクラス層向けの追加オプションとして扱うのが正しい。本サイトのコアペルソナには、まずB211Aで180日を使い切り、必要になったらKITAS E33Gの年収条件に届く収入をつくる、という順番を勧めたい。

3. 実務の注意点

  • Molina Portal: 2025年10月から、ビザ関連申請はMolina Portal(molina.imigrasi.go.id)経由が必須化。古いブログに載っている別ルートは今は使えない
  • オーバーステイ: 1日あたりIDR 1,000,000(約9,500円)のペナルティ。60日ごとの延長期限は絶対に守る
  • 税務183日ルール: インドネシア国内に年間183日以上滞在すると、インドネシアの税務居住者として扱われる可能性がある。B211Aで180日ギリギリまで使うと境界線上になるので、税務の観点では「160〜170日で出る」運用のほうが安全
  • VOA(到着ビザ/30日): 空港到着時に$35で取得できるビザ。30日+30日延長で最大60日。短期の下見滞在ならこれで十分だが、本格滞在ならB211A一択

ビザの条件は頻繁に改定される。申請直前にインドネシア大使館・Molina Portalの公式情報を必ず確認すること。本記事の情報は2026年4月時点のもの。タイDTV・ポルトガルD8・スペイン遠隔就労ビザ・エストニアノマドビザなど主要国の比較は【2026年版】デジタルノマドビザ完全ガイドにまとめた。バリ以外の都市も視野に入れるなら並行で読んでほしい。

ビザと表裏一体になるのが日本側の住民票・税金の扱いだ。B211Aで半年バリ、残り半年チェンマイや日本というマルチ拠点運用の場合、日本の非居住者判定は滞在日数だけでは決まらない。海外ノマドの税金・住民票ガイドで「183日ルール」の誤解と、税理士相談の前に自分で押さえておくべき論点を解説している。

V
— Chapter Five

正直な注意点——スクーター、
Bali Belly、過密

バリを「楽園」とだけ描く記事はSNSにあふれているが、数年住んだノマドが口を揃えて警告するリスクが存在する。観光地としての表層と、暮らす場所としての裏側は、はっきり分けて押さえておきたい。

スクーター事故——最大の命のリスク

バリでノマドが遭う事故のなかで、頻度も重大度も最も高いのがスクーター事故だ。2023年、バリ警察の統計で交通事故は7,000件を超え、632人が死亡、その86%がバイク関連だった(Bali Police公式発表)。現地紙Bali Sunやインドネシア現地メディアでは、外国人観光客・ノマドの死亡事故がほぼ毎月報じられている。ライスフィールドの小径、雨で滑る路面、無保険のローカルドライバー、ヘルメット未着用——これらが重なる。

対策は3点に集約される。(1)国際運転免許証を必ず用意する(無免許運転で事故を起こすと保険が効かない)。(2)フルフェイスヘルメット着用(貸し出しのハーフキャップは形だけの防具で、時速50kmの転倒には無力)。(3)バイク特約の付いたノマド保険または海外旅行保険(通常の保険はバイク運転中の事故を対象外にしていることが多い、契約書を必ず確認)。この3点を守らないなら、スクーターは借りずにGrab/Gojekで移動したほうがいい。筆者の周辺でも、ノマド歴5年以上の人ほど「スクーターには乗らない」と決めている人が一定数いる。

Bali Belly——訪問者の半数が経験する胃腸炎

BIMC Hospital(バリの主要国際病院)の公式ガイダンスでは、バリ訪問者のおよそ50%が「Bali Belly」と呼ばれる胃腸炎を経験するとされている。主な原因は水・生野菜・氷を介した細菌感染(大腸菌、サルモネラ、ロタウイルスなど)。滞在開始から3〜7日目に急性の下痢・腹痛・発熱で来る。

対策は生活習慣の切り替え。水道水は飲用不可、歯磨きもペットボトル水を使う。屋台の氷、生野菜のサラダ、カット済みフルーツ、再加熱されていない屋台料理は初期1ヶ月は避けたほうが安全。症状が出たら経口補水液(ORS)でまず脱水対策、38.5℃以上の発熱か血便があれば迷わずBIMC/Siloamに行く。慣れてくれば屋台も食べられるようになるが、到着直後の「観光気分で全部試す」はハイリスクだ。

水・電気・通信の不安定さ

水道水は飲めない。電気は月に数回、突発的に数時間落ちる。Biznet光が安定しているエリアでも、雨季のスコール直後は速度が半減することがある。Starlinkを住居に引いて保険にするノマドが2024年以降急増しているのは、この不安定さを静かに解決するからだ。Zoomで失敗できないクライアントMTGがあるなら、自宅Wi-Fi+スマホテザリング+近くのコワーキングの3段バックアップを組んでおく。

過密とジェントリフィケーション——両論併記

2024〜2026年、チャングーとウブドの両方で過密問題が深刻化している。現地メディアやノマドコミュニティでは「3年前のバリに戻ってこない」という嘆きが常態化した。Tandfonlineの2025年のノマドツーリズム研究論文でも、バリは「デジタルノマドによるジェントリフィケーションの教科書的事例」として取り上げられ、ローカル住民の家賃高騰・文化的摩擦・環境負荷が指摘されている。

ノマド側の視点では、これは「便利さが増した」側面でもある。スペシャルティコーヒー、コワーキング、医療、配車アプリ——すべて2020年代前半より劇的に良くなった。ただしローカル住民側の目には、同じ変化が「住めなくなっていく変化」として映っている。この二面性を知ったうえで滞在することと、Warungで食べ、現地人のビジネスを使い、観光客マナー(ビーチクラブの過剰な騒音、寺院での不適切な服装、ライスフィールドでの無許可ドローン)を避けることは、ノマド側の最低限の倫理だ。

医療

バリの国際水準医療はSiloam Hospital(Denpasar、Nusa Dua)とBIMC Hospital(Kuta、Nusa Dua)が二大拠点。英語対応、海外旅行保険のキャッシュレス対応可。軽症から中等症まではここで完結する。ただし心臓・脳の重症案件や高難度手術は、シンガポール・バンコクへの搬送が現実的。この搬送費用(数百万円)は通常の旅行保険では上限を超えることが多いので、長期滞在するならSafety Wingなどノマド向け保険で医療搬送カバーを確認する。

「このままでいいのか」と
疑えていること自体が、
すでに動き始めている
証拠だ。

— Key Insight
VI
— Chapter Six

ヨガもサーフもやらない人が、
それでもバリに行く理由

バリに行くというと、ヨガマットを抱えたインフルエンサーか、サーフボードを抱えた男性の画像が反射的に浮かぶ。これがある種の参入障壁になっていて、「自分はそのタイプじゃないから」と蓋を閉じてしまう日本の会社員は多い。実際にはバリは、ヨガもサーフもやらない会社員リモートワーカーにとっても十分に価値がある島だ。理由を3つ置いておきたい。

1. ノマド密度が世界トップクラスという社交価値

Dojo Baliに毎日100人が集まる、という密度はほかの都市にはない。一人で海外に出るとき最大の心理負担は「孤独」だ。バリ(特にチャングー)は、朝カフェで隣の席の誰かと3分話せば、その日の夕方には一緒にビーチでビールを飲んでいる密度がある。仕事のリファラル、フリーランス案件の紹介、共同プロジェクト——こうした縁がコワーキングの日常会話から生まれる頻度が、バリは異常に高い。これは数字に出てこない経済的価値でもある。

2. ヒンドゥー文化が日常に溶けている独自性

インドネシアはイスラム教徒が世界最多の国だが、バリ島だけは例外的にヒンドゥー教徒が90%を占める。毎朝、家の門前・店先・スクーターの上に「Canang Sari」と呼ばれる小さな祈りの葉皿が捧げられる。9月〜10月には最大の祭り「Galungan」で島全体が竹細工のPenjorで飾られ、数百の寺院で儀式が行われる。観光パンフレットの中の「異国情緒」ではなく、人々の日常の呼吸と同じリズムで信仰が回っている——これはチェンマイのテーラワーダ仏教とも、ホーチミンの社会主義的な世俗性とも違う、バリだけの空気だ。ヨガをしなくても、この空気のなかで働いているだけで何かが緩む。

3. 時差UTC+8——日本マイナス1時間の実利

意外に知られていないが、バリは日本のマイナス1時間(UTC+8)。チェンマイ・ホーチミン(マイナス2時間)より日本に近い。日系クライアントとの会議を組むとき、日本の10時がバリの9時、日本の18時がバリの17時——ほぼ時差を意識しないで日本のスケジュールに乗れる。これはリモート会社員や日本クライアントを持つフリーランスにとって、実は大きな効用だ。

「やらなくてもいつでも始められる」選択肢の豊かさ

ヨガとサーフは、やらなくてもいい。ただ、やろうと思った日に、徒歩5分で世界トップクラスの環境にアクセスできるという選択肢が毎日開いていることは、東京にいるのとは根本的に違う。ビーチクラブ(La Brisa、Finns)のプールサイドで金曜の夕方に仕事を閉じる、ライスフィールドを眺めながら朝のコーヒーを飲む、Warungで120円のナシゴレンを食べる——「やらない」という選択もまた、選べるうちに価値がある

VII
— Epilogue

チェンマイと使い分ける、
ノマドの二都市運用

バリは「究極のノマド拠点」ではない、というのが数年回してみての率直な結論だ。集中したい時期はチェンマイ、開放したい時期はバリ——このリズムで年を分ける人が、筆者の周辺でも一番しっくり回っている。ウブドの霧の朝とチャングーの夕日、チェンマイ旧市街の読経と路地のランタン。同じ東南アジアでも、脳に入ってくる情報の質が全く違う。

初めてバリに行くなら、いきなり6ヶ月ではなく、1ヶ月のお試し→合えば3ヶ月B211Aで本格滞在という段階投資を勧めたい。初月はチャングーのコリビングに入ってDojoで100人の空気を浴びる。合わなければウブドに1週間移ってみる。ここまでで自分のモードが分かる。

「バリは特別な人が行く場所だ」と閉じていた蓋は、数字で見ればあっさり外れる。B211A $200と往復航空券。これだけで180日の試用期間がもらえる。日本での月収が20万円で止まっていたとしても、月15万円で回るバリでは生活費の心配は一段階下がる。英語が話せなくてもDeepL/ChatGPT/Claudeで日常は回る(実際、筆者が知る日本人ノマドの半数は英語初級で3年以上生き延びている)。できないのではなく、試していないだけというのが正確な現在地だ。

バリに来ることそのものはゴールではない。大事なのは、どうやって収入を得るか。ここで暮らすための仕事の作り方——会社員リモート転職、フリーランス、ストック型ソロ事業まで、具体的な6タイプを下の記事でランキング形式にまとめている。

Next Step

「海外で働ける仕事」を知る

バリで暮らす準備ができても、収入がなければ始まらない。会社員リモート転職からフリーランス、ストック型ソロ事業まで、ノマド前提で成立する6タイプの仕事を再現性・収入上限・場所自由度の3軸で比較した。自分の今のキャリアに一番近いタイプから読んでほしい。

海外で働ける仕事ランキングを読む →
— In Summary

この記事の要点

  1. バリは3エリアで別の島になる。社交はチャングー、集中はウブド(Nomad List世界40位・3.67/5)、サーフはウルワツ。迷うならチャングー1ヶ月→ウブド1ヶ月の2拠点型。
  2. Nomad Listの月$1,911〜$2,091(約30万円)は短期Airbnb前提の表面数字。長期契約+Warung中心で月15〜20万円に落ちる(2026年4月参照)。
  3. コワーキングはDojo Bali(月無制限$230、24/7、Wi-Fi 200Mbps超)を核に、Tropical Nomad、Outpost Canggu/Ubud Penestanan。Hubudは閉店済み。
  4. ビザはB211Aで60日+延長2回=最長180日が実務の主軸。代理店費$150〜$200。KITAS E33Gは年収$60,000以上要件でハイクラス向け。
  5. スクーター事故(2023年バリ警察7,000件超・632人死亡・86%がバイク)、Bali Belly(訪問者50%)、水道水飲用不可、停電月数回、ジェントリフィケーション——この5点は軽視しない。
  6. 時差は日本-1時間(UTC+8)。日系リモートワークとの相性はチェンマイ・ホーチミンより1時間分だけ良い。